男性ホルモンと皮膚の関係 ~にきび編~

前回お話したように、男性が清潔感を身につけるために、皮膚に関する基礎知識を知ることはとても重要です。そこで、今回は気になる「にきび」についてお話したいと思います。

男性ホルモンは、皮脂を分泌する皮脂腺に大きな影響を与えています。なぜなら皮脂腺の大きさの変化は、そこから分泌される皮脂量の変化と比例するためです。皮脂腺がとくに多く存在する頭部や顔面(前額・眉間・鼻翼・鼻唇溝・頤)・前胸部などは、思春期になると増大する男性ホルモンの影響を受け、皮脂腺が増大・発達します。その結果、皮脂量が増え「尋常性ざ瘡(にきび)」や「脂漏性皮膚炎」といった肌トラブル発症の基礎条件となる「脂漏状態(脂性肌)」を作り上げてしまうのです。

にきび(尋常性ざ瘡)とは?

血中の主な男性ホルモンである「テストステロン」は、皮脂腺に存在する酵素により代謝され「5αジヒドロテストステロン」となります。この「5αジヒドロテストステロン」は皮脂腺の機能を亢進し、皮脂の生合成を増大させるほか、毛包の入り口(毛包漏斗部)をつまらせる「角栓」を形成します。その結果、にきびの原因菌であるアクネ菌(C.acnes)が増殖し、炎症をおこして通称「にきび」が発症します。

その他「にきび」の発症要因として、食事、整腸状態、睡眠などの生活習慣や、精神的要素、外的刺激、遺伝的素因なども関与していますが、現在では、日本皮膚科学会が策定した【尋常性ざ瘡治療ガイドライン】をもとにした適切なにきび治療を受けることも可能になっています。

にきびは重症化すると必ず瘢痕を残してしまいます。早期に皮膚科を受診し、適切な治療を受けられることをおすすめします。

にきび肌のスキンケア

にきび発症の主たる原因となる男性ホルモンを減少させる適切な治療法は、残念ですが現時点ではありません。にきびでお悩みの方は、皮膚科を受診して治療を開始されると同時に、医師のアドバイスによる油分の少ないメンズ スキンケア化粧品による脂性肌ケアや、殺菌作用、角質剥離・溶解作用、消炎作用が適宜配合されたニキビ防止化粧品を使用して、ぜひ適切な「にきび」ケアを行ってください。

男性も歳を重ねても肌の健康を保ち、清潔感のある素肌を目指しましょう。

樋口 彩子

Dクリニック東京 メンズ・Dクリニック東京 ウィメンズ 皮膚専門外来医師

帝京大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学付属第三病院にて初期研修を修了。その後、東京慈恵会医科大学病院皮膚科学講座に入局。助教に就任後、Dクリニック東京 メンズ・Dクリニック東京 ウィメンズ、皮膚専門外来を担当。 皮膚科一般診療及び美容皮膚科診療を得意分野とする。 日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本香粧品学会 所属。