男性の皮膚について知ろう

清潔感を身につける第一歩として、男性の皮膚に関する基礎知識を知ることがまず第一に必要です。私たちの皮膚は1枚の膜ではなく皮膚表面から表皮、真皮、皮下組織の3つの層と毛髪、爪、汗腺、皮脂腺などの皮膚付属器から構成されています。

このうちの表皮の最外層は角層で覆われていますが、この角層は美容上もっとも重要な役割を担い、肌のキメ(肌理)はこの角層の状態を反映しています。

また、この角層の上を覆っているのは皮脂膜で、水分保持機能や有害物質の侵入や感染防御機能などを主に担っております。皮脂膜は皮脂腺から分泌された皮脂を主体に、汗腺から分泌された汗、角層の分解産物がまじりあって完成されますが、男性ではホルモンの影響により皮脂の分泌が過剰となるため、いわゆるギトギトした「てかり肌」という脂性肌の状態を起こし易くなります。

男性はこの状態を回避すべく制汗シートの使用や洗浄を頻回に行うとよく診療の場でお話を伺います。しかしこの皮脂膜は拭き落としや洗い落とされた後、新生するまでにしばらく時間がかかるため、繰り返される皮脂の除去による水分保持力の低下とそれによる水分の蒸散により結果、乾燥を招くことになるのです。男性の皮膚は「てかてか・ギトギトしているのにカサカサ」という乾燥性脂性肌状態に陥りやすいのです。

また男性は特有の生活習慣(喫煙、飲酒、食生活の乱れ、肉体的・精神的疲労など)や女性のようなまめなスキンケアなくして行われる毎日の髭剃りや紫外線無防御などにより、角層がダメージを多く受け、皮膚の老化の進行が女性に比べ早まることが実際です。

男性の中には「男がまめにスキンケアを行うなんて。」と抵抗を感じる方も多くいらっしゃると思います。しかし実際には男性こそ、肌の健康と美を保つためにもスキンケアが必要となるのです。また、一方で男性も50歳を過ぎたあたりからホルモンのバランスの変化、それに伴う皮脂量の減量に伴い、少しずつ乾燥しやすいお肌に転換します。

若年層では油分の少ないオイリー肌用、50歳頃からは保湿効果の高い乾燥肌用、などのメンズコスメシリーズなどをうまく利用し、保湿による肌のお手入れを日常的に行いましょう。 歳を重ねても肌の健康を保ち清潔感を保ってこそ、他者との関わり合いの場で良い人間関係を築くことができるのです。

樋口 彩子

Dクリニック東京 メンズ・Dクリニック東京 ウィメンズ 皮膚専門外来医師

帝京大学医学部卒業後、東京慈恵会医科大学付属第三病院にて初期研修を修了。その後、東京慈恵会医科大学病院皮膚科学講座に入局。助教に就任後、Dクリニック東京 メンズ・Dクリニック東京 ウィメンズ、皮膚専門外来を担当。 皮膚科一般診療及び美容皮膚科診療を得意分野とする。 日本皮膚科学会、日本美容皮膚科学会、日本香粧品学会 所属。