冬の大敵、乾燥に備える。日本人の最も身近な植物。~ 米 ~

こんにちは。今年は10月を過ぎても夏日が続き、いつまで暑さが続くのかと思っていましたが、束の間の秋を経て一気に寒さが増してきました。急な気温の変化で体調を崩される方も多いようです。皆さまも暖かくしてお過ごしください。太陽の時間が日に日に短くなり、頭上に皇帝ダリアが大輪の花を咲かせれば、いよいよ冬本番です。そう、ついに乾燥肌の季節がやってきます。気象庁発表の資料によると、12月に入ると急に湿度が低くなる傾向があるようです。本格的に空気が乾燥してきますので、しっかりと乾燥肌対策をしてくださいね。

保湿は、肌本来の美しさを保つために重要なスキンケアです。そのため、化粧品には様々な保湿成分が配合されています。角質細胞間脂質の主要成分であるセラミドや真皮の基質を構成するヒアルロン酸などは、多くの化粧品に用いられています。また植物性の成分では、オリーブ油やホホバ油などが広く使われています。一口に保湿成分といっても様々なものがありますので、お肌にあったものを上手に取り入れるようにしましょう。

玄米は生薬

今回は、日本人の主食である「米」についてお話しさせていただきます。お米の保湿作用?と疑問をお持ちの方も多いかもしれませんが、私たちが普段食べているお米(うるち米)の玄米は、実は生薬としても用いられています。医薬品に関する品質規格書である日本薬局方には、生薬「粳コウ米ベイ」の名で収載されており、その解説書の[薬効薬理]の項目には、抗腫瘍、利尿、健胃作用、滋養作用の記載が見られます。風邪をひいて病院にかかると、西洋薬と一緒に麦門バクモン冬ドウ湯トウという漢方薬が処方されることがありますが、この中にも配合されています。毎日食べているお米が、実は医療用漢方製剤にも配合されていると聞くと、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

化粧品に配合する保湿成分としては、米ぬかから抽出された「コメヌカ油」が使用されます。米ぬかには、セラミドと同じ構造を持つスフィンゴ糖脂質が多く含まれています。近年の研究では、精製法によって、天然保湿因子(NMF)の元となるフィラグリンの生成を促す働きがあるコメヌカ油を製造できることが報告されています。また、植物性保湿成分の代表格であるオリーブ油に比べてトコトリエノールや γ–オリザノールといった抗酸化成分が多く含まれており、オリーブ油に変わる新たな植物性保湿成分としても注目されています。

ちなみに、コメヌカ油は食用油としても古くから使用されています。原料をほぼ国内で調達できる唯一の植物油であり、食の安全の観点から高い需要があります。また、γ–オリザノールには、臨床的にも高脂血症や高コレステロール血症の改善などが報告されていることから、最近は健康志向の方に支持されているようです。ただし、カロリーが他の油より低いわけではないので、摂りすぎには注意が必要です。

私たちに身近なお米は、実は保湿成分としても優れた植物なのです。今日の夜ご飯を炊く時に、いつもより少しだけお米に感謝してあげたいですね。お米がおいしい新米の季節、つやつやもちもちのご飯を食べながら、きれいなもち肌を目指しましょう。

木村 元直

マーキュリー製薬 勤務。同社の通信販売部門において、医薬部外品、化粧品の販売業務を担当。

また、温泉入浴指導員の資格を持ち、休日は暇を見つけては全国の温泉地を訪れている。