犬の保湿剤

犬の保湿剤をご存知でしょうか?

犬もヒトと同じように冬場の室内や洗浄した後などでは皮膚は乾燥します。犬の皮膚の乾燥は、白いフケがついたり、被毛自体がパサパサしたりなどの症状が出ますが、見た目では分からない場合もあります。特に、脂漏症(※)や犬アトピー性皮膚炎などのような皮膚病がある犬においては、皮膚の乾燥が著しく認められることが報告されています。

わんちゃんの保湿剤の種類

犬の保湿剤には、クリーム、ローション、乳液、ジェルなど様々なタイプのものがあります。被毛が多い部位には塗布しやすいローション、被毛が少ないお腹などには残留性が高いクリームや乳液、肉球などの表面が硬い部位にはジェルなどの浸透性が良いものを使うなど部位によって分けます。

最近では泡タイプの保湿剤もあり、被毛が多い犬にとっては、より簡易的に広範囲に保湿剤を塗ることができます。これはヒトも顔や手、体によって、保湿剤の種類を変えるのと同じように、犬においても、部位によって塗りやすさ、浸透性が異なるので、ご家庭のワンちゃんの皮膚に合わせて使用してあげると良いでしょう。

わんちゃんの保湿成分の選び方

成分に関しては、セラミド、ヒアルロン酸、リピジュア、アミノ酸、尿素などが配合されたものが保湿力が高く、皮膚の潤いに期待できます。特に、セラミドはヒトセラミド、動物セラミド、植物セラミド、セラミド擬似物質などの種類があり、ヒトセラミドは最も保湿力が高いと言われています。ヒトセラミドは、表記されているセラミドの後にアルファベットや数字が記載(セラミド1、セラミド3、セラミド6、セラミドNP、セラミドAPなど)されており、犬の保湿剤にも、ヒトセラミドを採用しているものもありますので、ぜひ製品の裏面を確認してみてください。
また、ヒアルロン酸やリピジュアは皮膚病面に保湿成分を残留させ効果を持続させる作用があり、尿素やアミノ酸は皮膚の角質を柔らかくする作用があります。このように保湿成分にも様々な種類があるため、これらの成分が複合的に配合されているものを選んでいただくと良いです。
ただし、保湿剤を塗るという行為が苦手なわんちゃんも多いため、まずは、慣れるためにも、無理をせずスキンシップの一環として腹部や背中などを優しく撫でるように保湿剤をつけることからはじめてみましょう。

※脂漏症 ⇒ 犬の脂漏症は、皮脂の分泌量の増加によって痒みや皮膚のベタつきが生じる皮膚病です。アメリカンコッカー・スパニエルやシー・ズー、ウエストハイランド・ホワイトテリアに多いことが報告されており、体質的な問題と考えられています。特に、夏場に悪化しやすく、皮脂が増えると常在微生物であるマラセチアの増殖が起こり、独特な体臭やさらなる痒みが生じます。治療は、皮脂の管理のためのスキンケアや抗菌薬の使用を行います。

江角 真梨子

獣医師/日本獣医皮膚科学会認定医、日本コスメティック協会認定指導員(インストラクター)

 

日本大学獣医学科卒業後、動物病院の勤務医として一般診療に従事。その後、東京農工大学動物医療センター 全科研修医修了後、現在のVet Derm Tokyoに所属し、各地の動物病院に出張で皮膚科診療を行っている。専門学校ビジョナリーアーツ非常勤講師、帝京科学大学非常勤講師なども務める。