スポーツと紫外線対策

東京オリンピック開催! 金メダリストは期間中にどれくらい紫外線を浴びるの?

いよいよ東京オリンピックが、来年の7月から始まります。
これに先がけ、競技会場や交通網の整備、大会スケジュールの決定など、さまざまな準備が進められています。観戦チケットの争奪戦に加わり、一喜一憂した方も多いのではないでしょうか?

そんな中、最近マスコミを賑わせているものがあります。
東京オリンピックの課題のひとつ「熱中症対策」です。

今年の夏、東京では最高気温が35℃以上となる猛暑日が、過去最多になりました。確かに何年か前の気候を考えると、気温の上昇が続いているように思います。
このような状況を鑑み、東京オリンピック・パラリンピック競技組織委員会では、さまざまな対策を行っています。
熱を吸収しにくく冷却効果を維持できる路面舗装や、座席空調の設置などです。
また多言語で書かれた熱中症対策のリーフレットを作成し、配布する準備もあるとのことです。

更にはつい先日、マラソンと競歩のコースが東京から札幌に変更になることが発表されました。
2019年の東京オリンピック開催と同じ季節、同じ時間の気温は、変更の地となった札幌は22.7度、対して東京では27.5度でしたので、選手にとって競技に及ぼす影響が少なくなったといえるのではないでしょうか。
熱中症になる原因として、先に挙げた気温や湿度がありますが、日差しが強いという環境の要因もあります。
次はこの日差しについても、考えてみたいと思います。

東京オリンピックでは、熱中症対策の他にもうひとつ、競技選手たちの「紫外線対策」も、話題となっています。
これに関しては、オーストラリア 南クイーンズランド大学などの研究チームが、東京オリンピックで各競技の金メダリストが、最も多く紫外線を浴びる屋外競技の推計をまとめ論文として発表しました。この推計は、日程・会場・プレー時の姿勢・ウエアなどを考慮して細かく算出されています。
この調査結果によると、最大量の紫外線を浴びるのは女子テニスのシングルスで、なんとその合計は10時間半にもなるとのことです。

この紫外線、「多く浴びると皮膚がんのリスクが上がる」との指摘もあります。
このことから今回の紫外線を浴びる量の調査の結果をもとに、生涯にわたって紫外線にさらされるリスクのあるスポーツ選手に対して、

・ 練習時に着るウエアは肌を覆うものを着用すること
・ 汗に強い日焼け止めを塗ること

など、紫外線対策の重要性が説かれました。

さて、この紫外線を代表とする太陽光線を、無防備に浴びることで皮膚に現れる、「しみ・しわ・たるみ」などの老化現象、これを何と呼ぶか…このサイトをご覧の方々ならご存じかと思います。
これは「光老化」といい、最終的に皮膚がん生じることがあるといわれています。

この「光老化」に関して啓発活動を行っているプロジェクトがあります。本協会のWebサイトからもリンクしている「光老化啓発プロジェクト委員会」です。この委員会で、東京オリンピックを目前にスポーツ選手の紫外線対策と「光老化」について、実際の状態を知るべく、このプロジェクトの委員でもある皮膚科医の川島眞先生(東京女子医科大学 名誉教授)と、元オリンピック選手による対談が行われました。

(詳しくは「日刊スポーツ光老化啓発特集掲載記事」に記載されていますので、ご参照ください。)
○ 第1回 伊藤華英さん(元競泳選手)
URL  https://www.nikkansports.com/sports/special01/hikari/2019/hikari-itoh-01.html

○ 第2回 有森裕子さん(元マラソン選手)
URL  https://www.nikkansports.com/sports/special01/hikari/2019/hikari-arimori-01.html

第1回に登場する伊藤華英さんは、競泳選手としてオリンピックに2大会出場しました。また先に日本で開催されたラグビーワールドカップの、ドリームサポーターも務めていらっしゃいました。そんな伊藤さんは、日焼け止めを塗らないと泳いだ後の疲労が大きいことにいち早く気が付き、子どもの頃から日焼け止めによる対策を行っていたとのことです。また合宿などで訪れた海外の遠征先では、日焼け止めを塗らなければ入れないプールもあるほど、日本より日焼けに対する意識が高かったとおっしゃっています。このような環境で競技を続けていらっしゃったことが、結果として現役時代からの「光老化」を予防していたことにつながりました。

第2回に登場する有森裕子さんは、女子マラソンの選手としてオリンピックに出場し、2大会連続でメダルを獲得した実績をお持ちです。そんな有森さんは、レース中は必ずサングラスをかけ、目からの疲れを軽減する対策を行っていたと振り返っています。またマラソンも水泳と同様に、日焼け止めの使用が重要視されており、例を挙げると、海外でのレースで参加証に日焼け止めが入っている、受付で日焼け止めを配られるなど、紫外線対策に対する意識が高かったそうです。
なお、引退後もイベントなど屋外での仕事が多いために、日焼け予防効果のあるクリームを使用するなど、日常から紫外線対策を講じて「光老化」の予防を行っていらっしゃいます。

このように屋外で競技を行うスポーツ選手の中でも、紫外線対策とその先にある「光老化」予防の重要性が認識されてきています。

「光老化」の予防となる紫外線対策は、選手のみならず長時間スポーツを観戦する私たちにも重要です。例えば東京オリンピックで、ゴルフとビーチバレーのチケットが当選したとなると、思いの外長い時間屋外で紫外線を浴び続けることになります。
よって屋外観戦時には、下記に挙げるようなグッズなどを用い、紫外線対策を行うことが必要です。

日焼け止め(サンスクリーン剤)
赤く炎症を起こすUVB(紫外線B波)に効果的なSPFは、屋外での軽いスポーツには30以上、炎天下や海や山でのスポーツには50以上が目安となります。
またお肌を黒くするUVA(紫外線A波)に効果的なPAは、屋外での軽いスポーツには+++、炎天下や海や山でのスポーツには++++が目安です。
少し厚めに塗り、汗で流れたりするので、こまめに塗り直すこともポイントです。

サングラス
紫外線は目にも影響します。
日光を遮断するだけでなく、紫外線までカットするUVカット機能がついたものを選びましょう。
このUVカット機能は、紫外線透過率で表示されます。例えば1%未満のものは紫外線カット率が99%以上です。
またサングラスの上部や横の隙間からの紫外線を考慮して、レンズの大きいものや目をぴったりと覆うような形を選ぶことも大切です。

帽子
こちらも日差しを遮るだけでなく、UVカット機能のあるものを選びましょう。
UVカットの加工には、繊維に紫外線を反射する微粒子を織り込んでいるものと、生地に紫外線を吸収する薬剤を染み込ませているものがあります。
洗濯してもUVカット効果が持続する前者がおすすめです。
また形は、頭周辺を一周覆うつばのついたもの、そのつばが大きいものを選ぶと良いでしょう。

56年ぶりのオリンピック自国開催が決まり、直接競技を観戦する機会に恵まれました。
この機会を期に、私たち自身のスポーツ観戦時の紫外線対策を通じた「光老化」の予防についても考えてみてはいかがでしょうか。

(参考)
2020年東京オリンピックでの紫外線暴露と皮膚ガンのリスクについての論文

Biologically effective solar ultraviolet exposures and the potential skin cancer risk for individual gold medalists of the 2020 Tokyo Summer Olympic Games

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/23328940.2019.1581427

2020年7月24日から8月9日に開催される東京オリンピックにて屋外で実施される144種目について、この競技で金メダルを獲得する個人選手が紫外線に暴露する時間を算出し、紫外線を浴びると高まる皮膚ガンのリスク回避を呼び掛けている。

(監修)
川島眞先生
東京女子医科大学 名誉教授
NPO皮膚の健康研究機構 副理事長
一般社団法人日本コスメティック協会 理事長

日本コスメティック協会事務局