寒い冬に起こる皮膚トラブル

冬のケアポイント


もうすぐ冬本番。ヒトも肌荒れしがちなこの季節ですが、ワンちゃんも寒い季節に特有の皮膚病があるのをご存知でしょうか。今回は寒さにより起こる、ワンちゃんの皮膚トラブルについてお話したいと思います。

実は犬もヒトと同じように、冬場には寒冷により血管が収縮し末端の血流障害が起こることがあります。ワンちゃんの被毛の維持や再生には、血液からの栄養供給が不可欠ですが、血流障害が起こると被毛の発育不良や脱毛を起こすことがあります。冬場に限って、耳や足先・鼻先・尾などの末端の毛が抜ける場合は、末梢の血流循環不良が考えられます。

冬は「入浴」が効果的

これらの改善には、脚の末端を温める、刺激をして血流を促す、保温をするなど日頃のケアが大切です。例えば、炭酸泉による入浴や末端部分のマッサージを行う、衣類を着用する等、その対策法も様ざま。炭酸泉とは、お湯の中に小さな細かい泡の炭酸ガス(二酸化炭素)が溶け込んでいるお風呂のことで、スパや温泉施設などに人工の炭酸泉風呂が設置されていたり、大分県にある『ラムネ温泉』などの天然の炭酸泉などご存知の方も多いでしょう。
ワンちゃんなどのペットの場合は、人工の炭酸ガスを発生させる浴槽を設置しているトリミングサロンや動物病院で入浴することができます。また、近年、ご家庭向けのペット用炭酸泉入浴剤も販売され、日常的に家で温浴させることも可能です。ワンちゃん入浴の際は、脚先などの先端部分を優しくマッサージしてあげるとより効果的です。さらなる寒冷対策として、温かい素材の衣類の着用や靴下の着用、いつもの寝床にヒーターや毛布などを用意してあげるのも良いでしょう。

その他の改善方法とは?

その他考えられる、冬の寒冷による血流障害からくる皮膚病の症状に、耳の先端にただれや出血などがあります。いわゆる『しもやけ』のような状態です。この疾患は「寒冷凝集素症」と呼ばれ、特に、ミニチュア・ダックスフンドやイタリアングレーハウンドに多く見られる症状です。耳の先端からの出血やただれを発見した場合は、直ちに動物病院を受診されて下さい。寒い冬だから起こる、ワンちゃん特有の皮膚トラブルを未然に防ぐため、被毛や皮膚の状態をご自宅でもよく観察していただければと思います。

江角 真梨子

獣医師/日本獣医皮膚科学会認定医、日本コスメティック協会認定指導員(インストラクター)

 

日本大学獣医学科卒業後、動物病院の勤務医として一般診療に従事。その後、東京農工大学動物医療センター 全科研修医修了後、現在のVet Derm Tokyoに所属し、各地の動物病院に出張で皮膚科診療を行っている。専門学校ビジョナリーアーツ非常勤講師、帝京科学大学非常勤講師なども務める。