犬のスキンケア

犬の皮膚は人よりもデリケート

近年、犬においても人と同様にスキンケアが注目されています。特に、日常的な手入れを中心に、皮膚の健康維持、治療の一貫としてもスキンケアが取り入れられています。

犬の皮膚も、人と同様に外側から表皮、真皮、皮下組織の3層からできています。犬は、被毛が多いこと、皮膚のPHが高いこと、皮膚の角層が人よりも薄いなどの違いがあります。よく例えられるのが、人の赤ちゃんと同じようなデリケートな皮膚をしていると言われています。

動物病院での犬の受診理由のトップは「皮膚病」。それほど犬には皮膚トラブルが多いのです。そのため犬においても、シャンプーや保湿剤を使用して皮膚病の予防に努めています。

一方で、犬におけるスキンケアは飼い主の方が実施すること、毛の数が多いこと、犬が嫌がることなどから非常に煩雑になりやすく、スキンケアの実践や研究はまだまだ発展途上であることが現状です。実際には、犬における研究報告を基に試行錯誤で検討したり、ヒトのスキンケアを参考にしたりしています。

洗浄はしっかりと泡立てて優しく

近年、人においては顔、頭、体の洗浄の際に洗浄剤をよく泡立てて洗浄することが推奨されています。その理由としては、きめ細かい泡はクッションの役割を果たして皮膚表面の摩擦を軽減するほか、直接、ごしごし洗浄するよりも汚れや皮脂の吸着率が上昇します。

泡立てについては洗浄剤と少量のぬるま湯を混ぜ、スポンジやネット、泡立て器などを利用するとよいです。また、上手く泡立てることができない場合は、利用時に泡形状で排出されるポンプ容器の洗浄剤を使用したりすると便利です。

犬においては、全身的に洗う必要があるため、その他にも、泡発生装置、泡パック、入浴剤などもあります。皮膚がデリケートな犬にとっては、皮膚の摩擦や負担がなく洗浄することは非常に有用です。是非、ご自身の“わんちゃん”にも泡のお風呂や泡の洗浄を試してみてください。

犬のスキンケアに欠かせないトリミングサロン

犬の皮膚の最大の特徴は毛が全身に覆われていることです。近年、人気犬種であるトイ・プードルは愛らしい表情や仕草に加え、毛が抜けにくいといったことも人気の理由の1つです。

毛には毛周期という毛が生え変わるサイクルがあり特に毛周期の中でも、成長期とよばれる毛が伸び続ける期間が長くなっているため、毛が抜け落ちにくいと言われております。したがって、人間と同じように定期的に毛のカットをしたり、入浴を行ったり手入れをする必要があります。そして、犬の毛のカットやシャンプーを専門に行う施設をトリミングサロンといい、いわゆる人間の美容室にあたります。

トリミングサロンにはトリマーと呼ばれるいわゆる犬の美容師が施術を行いますが、犬は被毛が多く、全身を洗うのには時間や手間がかかることや、水が苦手な犬も多いため、より負担のないシャンプーやカットを行うために、効率的に洗うことができるシャワー装置、速乾性のあるドライヤーの使用、室内乾燥機などさまざまな機械や道具をとりいれながらより、安全かつ負担のない施術を行っています。

近年では健康な皮膚の維持のために炭酸泉やマイクロバブル、オゾン泉なども導入されており、わんちゃんの皮膚や被毛のトラブル防止のためにも定期的にトリミングサロンを活用していただくとよいかと思います。

江角 真梨子

獣医師/日本獣医皮膚科学会認定医、日本コスメティック協会認定指導員(インストラクター)

 

日本大学獣医学科卒業後、動物病院の勤務医として一般診療に従事。その後、東京農工大学動物医療センター 全科研修医修了後、現在のVet Derm Tokyoに所属し、各地の動物病院に出張で皮膚科診療を行っている。専門学校ビジョナリーアーツ非常勤講師、帝京科学大学非常勤講師なども務める。