【対談vol.5】ミュゼ×川島眞~美容業界における将来性~

日本初の美容皮膚科専門学術誌「Bella Pelle」での対談「医療と美容、それぞれの脱毛の未来を語る 」から5年(2018年5月発行)。その後の美容業界における『安心』『信頼』『実績』『独自性』『将来性』について全5回に分けて語り合います。

【Vol.5】
これまで脱毛業界の『安心』『信頼』『実績』『独自性』について、業界のリーディングカンパニーであるミュゼプラチナムの取り組みをお伺いした。今回は少し趣向を変えて、脱毛業界の「将来性」を予測する。業界最大手のミュゼプラチナムでは、どのような未来を見据え、今どのような準備を行なっているのか。日本コスメティック協会理事長の川島眞氏が株式会社ミュゼプラチナム執行役員の鎌田真理子氏にインタビューを行った。

美容脱毛サロンの将来性

川島
今回は将来性をテーマに、お話を伺っていきたいと思います。昨今、美容脱毛サロンの閉店や撤退が相次いでいますが、脱毛業界の現状はどのようにみておられますか?

鎌田
脱毛のニーズは依然高いままですが、大きな市場の変化を感じています。これまで脱毛は女性が主軸でしたが、近年は男性市場が拡大傾向にあります。また、ここ数年医療も美容も新規参入のプレーヤーが増えたことで、事業規模にかかわらず撤退するなど、市場の変化も激しくなっています。おそらくこの状況はもうしばらく続き、業界自体が再編されるでしょう。

川島
業界が再編中ということは、今は過渡期の段階であっていずれ落ち着くであろうと予測しているわけですね。その頃にはこの脱毛業界はどのように生まれ変わっていると思いますか?

鎌田
私たちが脱毛サービスを始めた頃は、脱毛料金が高く一般向けのサービスでありませんでしたが、徹底的にコストを見直し、低価格を実現させたことによってこの業界は大きく発展してきたと考えています。
そしてお客様から選ばれるサロンになるためには、通い続けたいサロンに変化することが必要です。脱毛はいずれ完了するので、サロンに通うことを卒業してしまいますが、私たちは10年以上前からこういった状況を見据え、オリジナルコスメの開発や美容関連ビジネスの拡大、フェイシャルメニューの拡充など常に時代を先読みしたニーズを捉え、お客様に満足いただけるサービスの開発を追求してきました。私たちに限らず今後はこの動きがますます活性化されると思います。

川島
より広範なビジネスに転換していくと予想されるのですね。先ほどおっしゃったように脱毛というニーズは無くならないと思いますが、脱毛以外のニーズも拾えるようにしていくことが重要であり、将来的にはそのように市場が変化していくということですね。
そうなれば当然スタッフ側の業務も増えることが想定されますが、3,000人もスタッフを抱えるミュゼプラチナムにおいては、新しいメニューを導入するにあたって障壁はないのでしょうか?

鎌田
ミュゼプラチナムは元々、脱毛を通じて美しい肌を手に入れていただくことをゴールとしているので、新しいサービスの導入も「脱毛が完了した方にも喜んでいただける」「さらに多くの美を提供できる」と、ポジティブに捉えてくれています。特に2024年は総合エステサロンへ大きく変化していく1年になるのですが、スタッフもしっかりと理解してくれているのを感じます。ただし店舗数が多い分、サービスレベルを一定にするには時間もかかります。そこは会社を挙げて研修スケジュールをサロンごとに管理するなど、教育面のサポートも行なっています。


業界の健全化は叶うのか

川島
医療脱毛の場合は専門的な資格がなければ参入できませんが、美容脱毛の場合は誰でも参入でき、競争に加わることが可能です。新規のプレーヤーや既存のプレーヤーが協力し、業界のイメージの回復や健全化を図ることは可能なのでしょうか?

鎌田
私自身はイメージの回復や健全化を図ってくことは可能だと思っています。そのためには、脱毛サービスを提供する一社一社がしっかりと責任感を持って運営にあたることが必要だと思っています。専門的な知識を持ったエステティシャンの育成、市場環境の変化への対応、スタッフが長く働き続けやすい環境整備など、しっかりと地に足をつけて未来を見据えることで、ポジティブな変化を促進させ業界全体が良い方向へ進んでいけるのだと思います。

川島
当たり前のことですが、法令を順守し、顧客と真摯に向き合う姿勢が大切ですね。スタッフに適切な研修や勉強会を行うこと、適切な衛生環境を持続させること、市場の変化に対応すること、これらは全て社会や顧客とのつながりが大切な要素となります。
昨今ミュゼプラチナムは競合サロンの閉店などによりサロンに通えなくなってしまった消費者、そしてそのスタッフの受け皿の一つとなっていますが、これは業界のことを考えての決断なのでしょうか?

鎌田
そういった側面もありますが、一番はミュゼプラチナムのサービスについて理解を得られる良い機会であると考えています。私たちは脱毛業界の中で多くのシェアを獲得していますが、今回の支援対象者はミュゼプラチナムを選ばなかった方達です。選ばなかった理由はさまざまあると思いますが、私たちのサービスをしっかり説明し、体験いただくことで、ミュゼプラチナムの良さを少しでも体感いただけるのではないかと考えています。今後長くお付き合いができることで、こういった取り組みはプラスに働くと思っています。

川島
未来を見据えた決断ということですね。これはスタッフの受け入れに関しても同様のことが言えるのでしょうか?

鎌田
もちろんです。基本的な知識を持ち合わせているので即戦力として期待もできますし、異なるバックグラウンドや視点を持つ人材が集まることで、組織の活性化にもつながると思っています。ただし、新しいメンバーが組織に適応できるようサポートすることも重要です。しっかりとミュゼプラチナムの文化を吸収し、現場に適応できるよう研修を行うなど、受け入れる側の準備もしっかりと行いました。

川島
組織の活性化という言葉が出ましたが、今後ミュゼが目指す組織とはどんなものですか?

鎌田
私たちが考える理想の組織とは「チーム主義でお客様第一主義を実現させること」です。一人で進む100歩よりも、全員で進む1歩の方が大切だと考えています。個人成果主義が浸透していたこの業界では、サロン内の雰囲気やコミュニケーションもどこか他人事のような雰囲気がありました。チーム主義はもっと風通しの良い組織を作るために必要なことと捉え、創業当時から今まで継承されてきた考えです。このチーム主義を全国のサロンで実現し、お客様の求めるサービスや一歩先の美しさ、感動していただける接客を提供することを目標としています。これはこれからも変わらない普遍的な考えだと思っています。

川島
なるほど、この業界でミュゼプラチナムはすごいスピードで成長してきたと思いますが、その根底には常に現状をより良く変えるという考えがあるからだと感じさせる内容でした。今回で対談コラムの連載は最後となりますが、今後ともお時間をいただき定期的にお話を伺える機会を頂ければと思います。ありがとうございました。



川島 眞

東京女子医科大学名誉教授
日本コスメティック協会理事長
東京大学医学部卒業。パリ市パスツール研究所に留学、東京大学医学部皮膚科講師を経て、東京女子医科大学皮膚科主任教授に就任。アトピー性皮膚炎をはじめ、美容、皮膚ウイルス感染症、接触皮膚炎などを主に研究。
日本美容皮膚科学会理事長、日本香粧品学会理事長などを歴任。平成30年に東京女子医科大学名誉教授に就任。現在、日本コスメティック協会理事長、医療法人社団ウェルエイジング名誉院長、東京薬科大学客員教授を併任。

鎌田真理子

株式会社ミュゼプラチナム
執行役員、教育部部長
大手エステサロンに入社後、ヨガを本格的に学ぶべく海外に留学。2007年エステティシャンとしてミュゼプラチナムに入社し、おもてなしの接客ときめ細やかなサービスでお客さまの信頼を集め、店長、エリアマネージャー、ブロック長、営業部部長を歴任。201610月より、エステティシャン出身者として当社初となる執行役員に就任。また2015年、2017年ミス・ユニバース・ジャパン ファイナリストBC講師、2016ミス・ユニバース・ジャパン日本代表公式コーチとして指導を行った実績を持つ。現在では教育部の責任者として、3,000人を超えるスタッフへ「おもてなしの接客」を伝えている。