市民公開講座「コスメも機能を持つ新時代へ」開催

2023年8月18日に、第41回日本美容皮膚科学会総会・学術大会にて、学会・ロート製薬株式会社の共催による市民公開講座が開催され、当協会からもスキンケアマイスター、コスメマイスター、コスメマイスター・ライトの資格取得者が多数参加しました。

本日はその市民公開講座のレポートをお届けします。

コスメシューティカルについて考える

「コスメも機能を持つ新時代へ」のテーマのもと、講演1では「コスメシューティカルとは~オンライン販売の現状と課題~」と題し、当協会 理事長の川島 眞 先生(東京女子医科大学名誉教授)による講義が行われました。

「コスメシューティカル」とは、「cosmetic(化粧品)」と「pharmaceutical(医薬品)」を組み合わせた造語で、「機能性を持つ化粧品(=機能性化粧品)」のことをいい、2001年に規制緩和によって化粧品に使用されるようになったハイドロキノンを含む化粧品などがあります。

これまで医師の管理下で処方されていたこれらの成分入りの化粧品が、オンラインなどで手軽に購入できるようになりましたが、手軽に購入できるようになったゆえのトラブルもあり、ここではその問題点が提起されました。

■規制緩和後の問題点
・販売時の説明が不十分ではないか?
・肌トラブル時のフォローが不十分ではないか?
・品質管理が不足していないか?
・人に譲ったり、ネットで売りさばいたりしてはいないか?

クリニックで対面処方される場合は、適正な使用方法の指導、トラブル時の相談や医師によるフォローアップがあります。オンライン販売でもこれに近い状況を作るために、最低限必要と考えられる販売体制の説明がなされました。

■販売者と消費者に求めること
・購入時の事前チェック(オンライン問診など)
・使用前ユーステスト
・正しい使い方の指導
・専門カウンセラーによる対応

これらはまだなじみがなく、どのようなものか想像がつかないことも多いと思いますので、今回の共催企業様の資材を用いて例をご紹介します。

手軽に購入できるようになった今だからこそ使う側の責任も求められ、コスメに関する知識を高め正しい使い方を身につけるなど、コスメティックリテラシーを向上させ、賢く美肌を目指すことが必要であるということを学びました。

機能性化粧品(コスメシューティカル)の実例

講演2では「ハイドロキノンやアゼライン酸等の機能成分の正しい理解と使い方」と題し、小林 美和 先生(医療法人こばやし皮膚科クリニック副院長)による講義が行われ、実際のコスメシューティカル(機能性化粧品)に含まれている主な成分についての説明がなされました。

■ハイドロキノンについて
・どのように働きしみに作用するのか
・医療機関による自家製剤の時代から、日本で安定性の高いハイドロキノンが開発されたことなどの歴史
・世界での使用状況
・効くしみと効かないしみ
・妊娠、授乳中、美白剤で肌トラブルを起こしたことがあるなど、使用の際に注意を要する人
・使用時のUVケアの必要性

■アゼライン酸について
・ニキビの発症メカニズム
・日本におけるニキビ治療ガイドライン
・皮脂の分泌抑制、菌を増やさない、炎症を抑える、メラニンを作らせない、毛穴つまり改善などの作用
・日本および世界での使用状況

コスメシューティカル(機能性化粧品)を安全に使用するために、事前問診やユーステストを実施すること、またハイドロキノンに関しては長期大量使用をしない、肌を休めるインターバルを設ける、UVケアを怠らないといった注意事項を、実際の成分から学びました。

しみで皮膚科を受診していい?

続いて、座長の尾見 徳弥 先生(クイーンズスクエア メディカルセンター皮膚科 部長)、川島 眞 先生、小林 美和 先生によるパネルディスカッションが開催されました。

興味深かったのは「しみくらいで皮膚科を受診してもいいのか?」という提起でした。
この疑問を持ったことのある方は多数いらっしゃると思いますが、しみの治療はまず診断から、そしてしみには複数の種類がありそれぞれ治療方法や対策が異なり、また時には皮膚がんの可能性もあるため、皮膚科医としては、いったんは皮膚科を受診して相談ほしいというお話を伺い、もっと気軽に受診してよいのだと感じ、皮膚科をより身近に感じました。

またどこまでのしみならネットでハイドロキノンを買って使っていいと思うか?ニキビはどれくらいの重症度で皮膚科にいくと良いか?など興味深いお話を伺うこともできました。

お楽しみの化粧品プレゼント

会場後方には共催企業のロート製薬様の展示ブースが設置されており、開演前から写真撮影を行ったり、実際に商品に触れたりと、実物で勉強することができました。またこの展示されていた製品のうち、今年5月に販売が開始された『ダーマセプトRX AZAセラム』が参加者全員に配られました。

おわりに

学会共催講座ということで、参加する前は「難しいのではないだろうか?」という懸念を抱いた方もいらっしゃったかと思いますが、演者の先生方により解りやすくご講義をいただき、また実際に化粧品を手に取るなど貴重な勉強の機会となりました。

超高齢社会を迎えた日本では、医療費の圧迫の問題もあり、今まで処方薬として処方されていた医薬品が一般に販売されるようになったものがあります。化粧品でも同様に、今まで医療機関で販売される化粧品のみに含まれていた成分が入ったものを自らの判断で購入できるようになり、セルフでケアする機会も増えています。ですが安易に使用せず、自己判断で使用する場合は、問診などの体制の整ったコスメシューティカルを使用するなど、使うほうも賢くなることが重要だということ=自分自身のコスメティックリテラシーを向上させなければならないということを強く思った市民公開講座でした。

今後も日本コスメティック協会では、このようなセミナーを通し美容に関わる情報をお届けしてまいります。開催はホームページ、メールマガジン、Instagramにてお知らせいたしますので、ご興味をお持ちの際はぜひご参加ください。

※日本コスメティック協会 Instagram

日本コスメティック協会事務局